五所川原ねぷた祭りの戦後史

我が櫂では、津軽の祭りや郷土芸能の歴史について、正しく後世に伝えることが大変重要であると考えております。

春楡ノ櫂を共に運営している佐々木啓祐氏(ささけい)が卒業論文で立佞武多の戦後史についてまとめております。

とてもよくまとまっており、具体的な証言をもとにした興味深い内容です。

冒頭を載せますので、興味を持ったかたは下部のPDFファイルから全編を御覧ください。

はじめに

(1)関心の所在
 青森県内の津軽地方を中心に例年7月下旬から8月中旬にかけて開催されるねぶた、ねぷた祭りは、江戸時代から続く伝統行事であり、現在は観光化が進み国内外から観光客の集まるイベントとなっている。これらの祭りは「眠り流し」と呼ばれる行事を起源としているものの、地域ごとに発展してきた歴史が異なる。そして、ねぶた燈籠の形状や囃子、掛け声の違いとして現在の祭りに反映している。
 今回対象とする五所川原市のねぷた祭りは現在、市が製作する高さ約 23 mの大型立佞武多と有志の団体が製作したねぷたが市内を運行している。そして、立佞武多が他の地域には見られない縦長の大きなねぷたであることから、観光客が多く集まる祭りとなっている。しかし、この祭りの形式は明治時代の写真をもとに立佞武多が復活した1998年から徐々に形成されたものであり、それまでは地域に根ざした祭りが存在していた。
 新型コロナウイルスの感染拡大により祭りの規模が制限されてきた近年、団体の存続をはじめ 祭り文化の継承が課題となっている 。これを克服するためには、あやふやなイメージや固定観念にとらわれるのではなく、これまで歩んできた歴史を明らかにしていくことが重要であると考える。本研究によって五所川原のねぶた祭りがどのように継承されてきたのか、市民にとってどのような存在であったのかを明らかにすることで、今後の祭り文化の発展につなげていきたい。
 なお、祭りの名称に関し青森県内では「ねぶた」と「ねぷた」の両方が使用されているが、五所川原市では広報において「ねぷた」の表記を長く使用しているため、本研究もこれを採用した。

(2)先行研究の 知見 と分析課題
 ねぷた祭りの歴史については青森市と弘前市を中心に研究が行われてきた(201620161、
201920192)。特に青森市では、祭りの起源から現在のねぶたに関わる多様な活動に至るまで言及している。一方、五所川原については成田( 20113が明治期、昭和期、現在の3つの時代区分から変遷を記述しているものの、ここでは昭和30年から立佞武多が復活し運行を開始する 1998年に関してほとんど言及がなく、他地域との比較がないため特徴が記述されていない。 また、青森市では戦後の大型ねぶたについて、運行団体、ねぶたの題材が記録されているが、五所川原ではそうした記録がほとんど残されていない。
 以上の研究状況を踏まえ、本論文では以下のような分析課題を設定する。

 第一に、戦後から現在の五所川原のねぷた祭りはどのように変化したかを明らかにする。年代ごとの祭りの差異や共通点 をふまえながら変化の要因を分析する。
 第二に、五所川原の祭りの特徴を明らかにする。五所川原の祭りに関する記録、情報を他地域の研究と比較することで五所川原の独自性について考察する。
 第三の課題は、運行に関する記録、情報の整理である。市史、広報、写真をもとに五所川原の祭りにおける各年の運行団体、作品の題材、受賞対象を明らかにし、傾向の把握につなげる。
 以上のような作業を通して、五所川原のねぷた祭りが市民にとってどのような存在であ
り、どのように受け継がれてきたかを考察する。

(3)研究方法と資料
 『五所川原市史』や市の広報を参照したうえ で、五所川原のねぷた祭りに関わってきた市民 5名を対象に聞き取り調査を実施した。調査内容は、主に基本属性(氏名、出生年、ねぷた祭りとの接点)、自身が味わってきたねぷた祭りの印象、ねぷたの製作、町内会や団体での活動である。
 聞き取り調査に加えて、数名の市民から1940年代から90年代にかけての祭りを記録した写真 や、団体のパンフレットといった情報提供を受けた。

(4)倫理的配慮
 聞き取り調査及び資料提供に協力してくださった市民の氏名については、プライバシーを配慮し匿名での記述とした。

佐々木啓祐「五所川原ねぷた祭りの戦後史」 2022 年度弘前大学 教育学部 卒業論文
佐々木啓祐氏(ささけい) Twitter
この記事を書いた人
こすめろ

春楡ノ櫂 会長。青森県五所川原市で生まれ、ねぷたを作ったり参加してる人です。五所川原高校立佞武多同好会OB(H23年度会長)で在学中に “堯舜の治∼諫鼓を叩く時∼”を制作しました。各種SNSはじめたのでフォローしてね。フォロバしてます!

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